研究概要 |
生層序学的研究およびその国際対比を進めるうえで,最も重要なのは準拠となる微化石生層序のスタンダードの確立である。本研究の目的は、スタンダードとなるべき標準コレクションの作成とその共同利用のための情報化である。試料は、深海掘削計画(DSDP)国際深海掘削計画(IPOD)において採取された堆積物のコアで、特に日本列島に関連する北〜北西太平洋、ベーリング海のものが用いられた。研究は、1,標準となりえるコアの選択、2,同コアから微化石の抽出とプレパラート作成、3,同プレパラートの情報化という手順で進めている。上記海域から得られた80本のコアのうち,日本列島と周辺地域を代表する微石生物群との対比が可能であるという条件のもとに、約30本のコアを選択した。さらに微化石の保存が良好であること、コアが連続的に採取されていることなど、陸上セクションとの対比材料として必要不可欠な条件により、最終的にプレパラートを作成する14本のコアを選択した。具体的には、各コアより10〜30m間隔で採取した堆積物試料から作成した塗付スライドのノマルスキ透過型微分干渉装置による検鏡、同試料の走査型電子顕微鏡による観察を進めてコアの選択作業を行った。これら14本のコアは、北太平洋千島列島沖、ベーリング海西部,中部,南部,そして北西太平洋のほぼ全域にかけての広大な海域を代表する。生物地理学的には、全く性質の異なる亜寒帯太平洋水塊と西部北太平洋中央水塊の2水塊を代表する。含まれる微古生物群は、中期中新世初期から現世までの約2千万年間を代表し、次年度にコア選択・プレパラート作成を予定している日本海全域、中部太平洋西部、フィリピン海北部から採取されたコアを加えると、日本列島やその周辺地域における生層序研究用標準セクションとして、十分機能できる地理的・時間的分布をもつことになる。
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