研究概要 |
ライムギB染色体とコムギ常染色体との転座を誘発してB染色体の動原体をもつ転座染色体(以下組換え染色体と称する)を作出する実験を行なった。 普通コムギ(2n=6x=42)とB染色体をもつライムギ(2n=2x=14)の交配により得られた【F_1】(2n=4x=28)種子3160粒を10KR〜40KRのX線処理した。照射種子の生存率は20KRまでは平均46%と無照射【F_1】種子より高い傾向を示したが、25KR〜40KRでは7〜22%と低かった。 10,15,18KRのX線処理した【F_1】個体の播種48時間後の根端細胞では、それぞれ61%,75%,83%の細胞で切断、転座等の染色体構造変異が観察され、1細胞当り平均変異染色体数はそれぞれ1.3,2.2,2.7個であった。しかし、播種72時間後の根端細胞では細胞当り変異染色体数は48時間後の観察に比べて21〜35%減少していた。これは構造変異染色体をもつ細胞が淘汰されたものと考えられる。 発芽生育した【F_1】1084個体はコルヒチン処理し、現在温室又はガラス室で育成中である。 ギムザCバンド分染法は、B染色体と常染色体を識別するには有効であったが、B染色体と常染色体の動原体自体の識別が不可能であった。そのため、照射【F_1】個体の根端細胞で常染色体間転座染色体とともにB染色体の大部分を含む組換え染色体は同定することができたが、B染色体の動原体あるいはその近接部のみを含む組換え染色体は同定することができなかった。また、Cd染色法などもB染色体と常染色体の動原体識別のために試みているがさらに検討を要する。 コムギ幼胚起源カルスから再分化能の高いカルスを選抜することができた。微注入法に供するために、このカルスから得た単細胞の培養条件を検討したが、最適条件はまだ決定していない。今後、培養条件とともに微注入法を検討する予定である。
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