研究概要 |
果樹遺伝資源は従来立木で保存されていたが, 本研究ではこれに変わる方法として(1)果実抽出物の生長抑制効果利用による試験管内での植物の生育抑制, (2)矮化剤利用による植物個体の矮小化, (3)茎頂の超低温保存について検討した. 以下各項目について記す. (1)オウトウ・ウメ・ビワ の実生や果実からの抽出物中には, 植物を抑制あるいは促進する物質が含まれていることが知られている. これら天然抽出物をスモモの茎頂培地に導入することにより茎頂の生育が抑制あるいは促進されることが明らかになった. 特にウメの果肉及び未熟種子とビワの未熟果実の抽出物を培地に添加した場合, 茎頂の生育は著しく抑制された. 現在ウメ果実抽出物の生長抑制効果について更に検討中である. (2)植物生長調節剤の一種である矮化剤にはPP-333, B-9等が知られている. 鉢植えのパパイヤ実生由来個体にこれら矮化剤を葉面散布あるいは土壌かん注したところ, PP-333処理区は伸長生長は7割以上抑制された. 定期的にPP-333処理することにより小型の植物体として維持出来ることが明らかになった. (3)初年度に茎頂培養条件の確立したパパイヤ・モモ・カキ・キウイフルーツ及びナシについてプログラムフリーザーを用いた茎頂の超低温保存条件について検討した. その結果ナシでは凍害防御剤のDMSOを用い, 約0.5°C/分で冷却した場合に容易に生存個体が得られること, ただし生存率には品種間差異が認められ, 幸水・豊水で約80%と高いことが明らかになった. また同じ条件で凍結した場合にモモの山梨白鳳も生存が確認された. これらは融解培養後に, かっ変した後約3週間経過後再び新しい葉が出現した. しかし生存率は約30%と低かった.
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