1.染色体マーカーに用いるための遺伝子のクローニング。 現在までに5種類が得られている。3クローンは、登熟期発現遺伝子のCDNAライブラリーよりクローン化を行ったものである。このうち2クローンは、ゲノムDNAとのサザンハイブリダイゼーションにより単一コピー遺伝子と考えられるものであり、残り1クローンは中程度反復遺伝子と考えられるものである。しかも、この反復配列遺伝子は、制限酵素切断パターンより、染色体上の特定部域でタンデムに10〜20コピー反復している可能性が高く、染色体上での分子雑種形成のための標識遺伝子として有望と考えられる。他の2種のクローンは、他の研究者によりクローン化されたもので、イネグルテリン蛋白遺伝子のCDNAクローンと、もう一種の貯蔵蛋白遺伝子のクローンである。 2.染色体上における分子雑種形成(in situハイブリダイゼーション)。 すでに貯蔵蛋白遺伝子のDNA配列を用いて、ゲノム中1コピーであることを確認した。この遺伝子と太糸期染色体、および体細胞中期染色体とのinsituハイブリダイゼーションを数回おこなった。核当り1〜数個のシグナルを検出したが、ハイブリダイゼーション処理により染色体の形態が損なわれること、および単一コピー遺伝子の位置確定のためには多数の細胞のデータ集積が必要なこととにより、まだ位置確定には致っていない。 3.染色体標本の問題。 分子雑種形成に用いる染色体としては、flame dryした標本ではハイブリダイゼーションの反応性が悪いため、空気乾燥法による標本を用いる方が、よい結果が得られると考えられた。よって、細胞処理をセルラーゼ・オノズ力RSとペクトリアーゼY23の系に替えて標本化を行ない、ハイブリダイゼーションの素材とすることとした。
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