研究概要 |
干拓地域の水生雑草の一種であるホテイアオイにおける無性繁植機構に関する研究の一環として、個体群の成長に及ぼす間引きの影響について実験を行った。その結果、個体密度が高くなるほど、ラミート形成が抑制され、形成される葉柄は細長くなることが確認された。また、実験開始以降に形成されたラミートすべてを除去した場合のホテイアオイは、間引き直後から、極めて規則的にラミート形成を行うことが推察され、従って個体密度の低下により直ちに腋芽の生長が促され、個体数増加速度が大きくなると考えられた。 つぎに、ホテイアオイの耐塩性や適応などについて検討した。その結果、Nacl25mM区と等しい浸透圧をもつ6/4Hoagland区でのRGRの低下が、Na添加区よりも小さかったことから、ホテイアオイの塩類による生育の低下は、培地の浸透圧より、むしろNaの過剰吸収によるものと推察された。また、Nacl含有率の上昇に伴って、Kの含有率が低下していることから、植物体内でNaとKの吸収の競合が起っているように思えるが、他のカチオン、あるいはカチオンとアニオンの総合的なバランスに関係する可能性もあり、現在までの実験結果のみでは不分明な点もあり、さらに今後の検討が必要と考える。 また、広塩性単子葉類の水生雑草ヨシの耐塩性機構についても究明した結果、ヨシは生育は抑制されるが、海水相当の高塩類環境でも生育可能であるが、双子葉類の塩性植物アッケシソウ,ハママツナ,ホソバノハマアカザなどと異なり、葉身のNa濃度は低く、K濃度は高く維持された。また、ヨシは体内の浸透圧作出にシュータロースを用いており、また、ヨシは根でNaの取込みをおさえるしくみが発達している。さらに、ヨシはエネルギーを使ってNaを体外へ排除している可能性が、放射性Na並びに代謝阻害剤を使った実験結果から示唆された。以上の成果は、干拓地水域の塩分濃度変化に伴う植生の変化を考察する上で、その意義は大きい。
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