研究概要 |
ロツクウール(RW)を用いた野菜栽培は、わが国ではここ1,2年前から開始されたばかりで,適切なかん液方法がまだ確立されていない。かん液量は,蒸発散量と密接な関係を有するが,後者を測定するセンサーに適当なものがないため,蒸発散量と最も関係が深いと思われる日射量に置き換えて考え,日射量の多寡に応じてかん液量を加減する養液供給システムの開発を行うため,本実験を行った。 1086年9月25日に,温室メロン'アールスフェボリット冬F3号'の本葉2枚苗を,RWスラブ上に定植し,温室内(最低20℃)で栽培した。処理区として(1)慣行区(水切り処理有),(2)日射量によるかん液区(同無),(3)同上(同有),(4)一定量かん液区(同無)の計4区を設けた。培養液は所定の濃度のものを,ノズルを用いて点滴し,施用量は(2),(3)区では日の出から、午前10時までの積算日射量によって,その日の天候を予測し,かん液回数を決めることによって,1日のかん液量を決定した。なお、正午までの積算日射量も測定し、10時以降天候が変化した場合に補正する方法をとった。生育初期の草丈には、処理区間に差がなかったが,水切りをすると生育が劣えた。地上部の乾物重や果実の新鮮重は全培養液施用量に対応して,4区〉2区〉1区〉3区の順になった。果実の外観や,ネット密度は処理区間に差がなかった。果実の肉質は滑らかで,果肉内の繊維量も目立たなかった。以上の結果から,日射量に応じたかん液区では,生育や果実の収量,外観は慣行区よりも優ったが、一定量かん液区には劣った。また水切り区は,しない区よりも劣った。従って、RW栽培では、従来の一般栽培で行われている水切りをしない方がよいことが明らかとなった。本実験は秋冬作であり,春夏作では日射量と蒸発散量とは相関が高いので、今後試験を行って確かめる必要がある。
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