研究概要 |
スダチの貯蔵技術は一応確立されたが,貯蔵中に発生する障害等の問題が残っている. この研究は,障害の発生機構を解明し,防止方法を確立するのに必要な基礎データーを得ようとするものである. 昨年の科研費により設置した,ある程度恒温恒湿条件下で予措が出来る実験装置により,同程度の"めべり"を異なる日数の間に,また同日数間に異なる"めべり"程度になる予措を行なった後貯蔵し,最適な貯蔵予措条件を探ろうとした. しかし今年は障害が多発し,健全果率が平均破20%と低く予措条件の検討は難しかった. これに対して,予措中に行なう温湯処理の障害軽減効果の高いことが再確認された. その処理のタイミングとして予措中の前期がよいのか後期がよいのは,収穫時期によって異なるようであった. この温湯処理の数年来のデーターをまとめて,来る昭和63年度春季園芸学会で発表する予定である. 本年は,果皮フラベド中のいくつかの成分について分析を行なった. 果皮水分含量は予措中に急減したが貯蔵中の徐々に増加し収穫時を上回る程になった. 健全果と障害果の差はあまりなかった. アスコルビン酸は予措中に急減し貯蔵中も徐々に減少した. 障害果は健全果に比べて総含量は少なかったが酸化型アスコルビン酸の割合が高かった. 全糖は予措中に少し増加後貯蔵中に徐々に隔少し貯蔵末期に急減した. 障害果は健全果より減少が大きかった. 還元糖は予措中に急増しさらに貯蔵初期にも急増を続け,以後徐々に減少したが貯蔵20週間後においても収穫時よりも多かった. そして,温湯処理区で増加程度が大きく,障害果で減少が多いなど障害発生との相関を示唆した. 主な有機酸組成はグリコン酸とリンゴ酸で,果汁に多いクエン酸はごくわずかしか含まれていなかった. 貯蔵中にグルコン酸は増加,リンゴ酸は減少する傾向がみられた.
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