研究概要 |
1.細胞膜に作用する宿主特異的毒素:細胞膜に作用点を持つと思われる宿主特異的毒素(HST)は、その作用過程から大きく2つのグループに類別できた。ナシ黒斑病菌HST(AK毒素)処理ナシ,リンゴ斑点落葉病菌HST(AM毒素)処理リンゴ,イチゴ黒斑病菌HST(AF毒素)処理ナシ,カンキツBrown spot病菌T系統HST(ACT毒素)処理ナシ,エンバクVictoria blight病菌HST(HV毒素)処理エンバクおよびサトウキビ眼点病菌HST(HS毒素)処理サトウキビでは、いずれもその初期に宿主細胞のSH基化合物が関与して細胞膜透過機能障害が誘起されること、その後蛋白de novo合成の関与する過程をへて壊死に至ることが示唆された。一方、AM毒素処理ナシ,AF毒素処理イチゴおよびACT毒素処理カンキツでは、SH基化合物や蛋白de novo合成の関与は認められず、前記グループとは異った過程で壊死に至るものと思われる。なお、AK毒素では、ナシ細胞膜に毒素受容体の存在が示唆され、現在、受容体を単離精製中である。 2.ミトコンドリアに作用する宿主特異的毒素:カンキツ葉よりミトコンドリア(Mt)を単離し、カンキツBrown spot病菌R系統HST(ACR毒素)の作用を調べた結果、毒素は感受性Mtにのみ作用を示し、その作用点がMtにあることが認められた。毒素処理Mtでは、Mt膜電位障害を伴う脱共役およびMt内在の【NAD^+】減少による呼吸の停止という2つの現象が誘起された。これらの現象は、トウモロコシごま葉枯病菌HST(HMT毒素)の作用と類似しており、今後、両毒素作用の比較研究が重要である。 3.他の宿主特異的毒素:作用点の明らかとなっていないトマトアルターナリア茎枯病菌HST(AL毒素)の作用点の探索を試みた。電顕観察では、宿主Mtに変性がみられたが、単離Mtに対する毒素の効果はみられなかった。今後、さらに他の細胞内小器官に対する毒素作用を検討する予定である。
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