研究概要 |
宿主細胞膜に作用するAK毒素の作用過程に関しては,毒素結合物質が感受性ナシ細胞膜に存在する可能活が示され,結合物質の純化をAK毒素をリガンドとしてアラィニティークロマトグラフィーを用いて試みた. 宿主ミトコンドリア(M+)に作用するACR毒素においては,感受性カンキツ葉からM+を単離し,その吸収活性に対する毒素の作用を検討した. その結果,外性NADH駆動の呼吸系に毒素を添加すると酸素消費が脱共役的に促進された. 一方, リンゴ酸基質の場合は,毒素添加により酸素消費の著しい抑制がみられた. この抑制された酸素消費はNADの添加により再び増大した. さらに感受性M+にのみ毒素処理によるNAD漏出量の増大が認められた. これより,本毒素は感受性M+に,脱共役およびNAD漏出という2つの効果をおよぼすことが明らかとなった. 作用点が不明であったAL毒素に関しては,本毒素が宿主トマト葉の光合成および呼吸能に影響をおよぼすことが認められた. また, 他の宿主特異的毒素として,Alterrarla tenuissimaの生成するATC毒素が新たに発見された. 病原菌の感染場面における毒素の役割に関しては,以下の知見が得られた. AK毒素では,毒素による細胞機能障害を阻害するSH基修飾剤処理により感染は抑制されたが,膜機能障害後の致死過程を阻害する鉄および銅キレート剤処理では感染が誘発された. 一方,AM,ACRおよびHMT毒素の作用はいずれも光照射下で抑制され,AM毒素では細胞膜機能障害後の致死過程が,ACRおよびHMT毒素ではM+作用後の細胞膜機能障害が阻害されるが,AM毒素では光照射下でも感染が誘発されたのに対し,ACRおよびHMT毒素では感染誘発はみられなかった. 以上の結果は,宿主特異的毒素による菌受容化の誘導には宿主細胞の致死は必要ではなく,毒素による宿主細胞膜の機能障害が重要であることを示している.
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