研究概要 |
植物細胞におけるウイルス間の相互補助または相互干渉作用を解析する目的で, 主としてオオムギ斑葉モザイクウイルス(BSMV)及びタバコモザイクウイルス(TMV)を用いて, 混合接種した葉組織, 培養細胞及びプロトプラストにおけるこれらウイルスの増殖パターンを調べた. タバコ葉に強毒株(TMVーOM)と弱毒株(TMVーLIIA)の比を1:1000以上にした混液を接種した場合には干渉効果が完全であるが, 1:100以下では効果が低かった. TMVーLIIAを予め接種した場合には干渉効果が大きいが,TMVーOMより後に接種した場合にはその効果は認められなかった. プロトプラストでは1:1000の濃度比でもTMVーONが増殖した. このことは干渉効果には組織が重要なことを意味する. 一方, TMVに低抗性と罹病性のタバコ品種を用いた実験から,TMV低抗性は数細胞のカルス組織でも発現し, かつ微量注入接種カリスの蛍光反応からすると, 低抗性はウイルスの細胞間移行の阻害にあると考えられた. オオムギ葉におけるBSMVとTMVーOMの相互作用の解析から, 前者の援助効果は1:1000の濃度比でも認められ, TMV系統間にみられた干渉効果はなかった. このことはBSMVによるTMVの援助効果がTMV侵入の段階ではなく, TMVーRNA複製の段階で発現することを意味している. BSMVによるTMV受容性の誘導機構を解明するためBSMV接種オオムギ葉の感染特異的蛋白を電気泳動法によって検出したところ, 少くとも12種類の蛋白が新しく合成されていることが明らかとなった. 現在, これら蛋白のTMV増殖効果を調べている. しかし, これらのいずれの蛋白もレプリカーゼ活性を示さず, この方法はレプリカーゼ精製に適していないことが明らかとなった. レプリカーゼ精製については, 別途検討中である. BSMV接種葉におけるTMV関連ウイルスの増殖について調べたが,これまでに供用した各種ウイルスの増殖は認められなかった. 現在, 更に他のウイルスについて検討を重ねている.
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