研究概要 |
本研究は家蚕核多角体病ウイルス(BmNPV)の増殖機構を家蚕由来の培養細胞であるBM-N細胞を用いて追求することを目的としている. 本研究の概要は以下の通りである. 1.本実験系においてプラークが形成されてこと, ならびにプラーク法によってBmNPVの定量が可能であることを確認し, 感染に伴うウイルス量の変動様相を明らかにした. また, BmNPVのクローニングを行った. 2.クローン化BmNPVのゲノムDNAの制限酵素断片を分析して, BmNPV DNAは約115Kbpであることを示し, 制限酵素DNA断片を入ファージ・ベクターにクローニングした. 3.BmNPVの構成たんぱく質は2次元電気泳動によって80個以上のポリペプチドに分離されることを明らかにした. これらのポリペプチドの中で分子量75K以上の比較的高分子量のポリペプチドは塩基性側に, 20K以下の低分子量のポリペプチドは酸性側に等電点をもつことを示した. 4.BmNPVの構成ポリペプチドを抗原として抗体産生ハイブリドーマを作製し, EL〓SAと蛍光抗体法でスクリーニングして両者に陽性を示す6種のクローンを得た. これらのクローンが産生するモノクローナル抗体をBmNPVの構成ポリペプチドに対する反応特性から3つのタイプに分類し, 各タイプの抗体で感染細胞を染色して各抗体に対応する抗原の細胞内局在性を調べたところ, 染色像は抗体の種類によって大きく異なっていた. 5.BmNPV感染細胞に^<35>S-methionineをとり込ませてフルオログラムを作製することにより感染細胞におけるたんぱく質合成の変化を調べた. その結果, 感染細胞に特異的なポリペプチドが分子量130Kから14Kにかけて27種出現し, このうち23種が抗BmNPV血清によって沈降することが明らかになった. また, ^<14>C-N acetyl glucosamineと^<32>Pを用いて糖たんぱく質とリンたんぱく質の合成についても検討した. 6.以上の結果にもとずいて, BmNPVの増殖機構について考察した.
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