研究概要 |
1.卵殻蛋白質コリオン合成の分子遺伝学的研究:昨年度の研究からカイコの祖先型とされるクワコの卵殻断面構造を観察したところ, その外層はカイコとは著しく異っていることがわかった. 本年はクワコの卵殻蛋白質の2次元電気泳動像から, 基本的にカイコと同様, A,B,C,Hc,の4種のグループに分けられる約70種が検出されることを明かにした. これら卵殻構成蛋白質と卵殻断面構造とを関連づけるため, クワコの最外層部分を剥離し, 中・内層部域との2部分に分けた. この2部分の蛋白質をSDS電気泳動または2次元電気泳動した. この結果最外層を構成する蛋白質はBグループの一部,CとHcの大部分から構成されており, A蛋白質グループはほとんど含まれていないことを明らかにした. 即ち卵殻構造蛋白質はその構造の部域によって異なり, 最内層がA,中層がAとB,外層がB,C,Hcグループから構成されている. 2.卵形成並に胚発生過程中における遺伝子発現の場としてのリボゾームの動態解析:本年度は本研究の一環として, 胚発生過程におけるアルドラーゼアイソザイムの発現状態をセルローズアセテート膜活性染色電気泳動法で追跡した. この結果, 冷浸後8日目まではヒトのA型,9日目からはC型と類似するバンドが認められた. 3.細胞分化に伴う組織の透過性と遺伝子作用の解明:前年では中腸組織でカロチノイド結合蛋白質(CBP)が合成されることを明らかにした. 本年はウエスタンブロッティング法で, このCBPが脂肪体,中部絹系腺,卵巣,卵細胞に移行することを認めた. 4.卵形成に関与する蛋白質・核酸の解析とその機能的役割:卵形成に重要な働きをする幼虫型雌蛋白質(FL)を雌雄モザイク蚕で解析し, この合成に関与する脂肪組織の重要性を解明した.
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