研究概要 |
寒地型草類の夏枯れ抵抗性の強弱を評価するために, 昭和62年度はイネ科草類としては昭和61年度は同様トールフェスキュ,ケンタッキーブルーグラス,オーチャドグラス,チモシー,マメ科としては赤クローバ,白クロバー,およびアルファルファーの他にクリムソンクロバーを圃場に栽培するとともに,土耕ポット栽培を実施し, 供試草種の夏枯れ抵抗性の栄養生理的要因を検索した. I:(a)イネ科草類の夏枯抵抗性の強い順位は昨年と同様トールフェスキュ〉オーチャードグラス〉ケンタッキーブルーグラス〉チモシーであった. また根系の発達程度とともに, アルファナフチールアミン酸化力, およびTTC還元力より判断しえた根の生理的活性は夏枯れ抵抗性の強い草種ほど高かった. 特に梅雨あけ以後の土壌水分pFの上昇期にこの差異は明瞭になった. (b)光合成能ならびに呼吸能に関する検討結果も昨年と同様, 夏期高温寡湿下では光合成能が低下するが, 根の呼吸能は低下せず, 燐酸, カリおよびカルシウムの吸収は強く抑制された. (c)梅雨期の低い土壌pF条件下で, 花芽形成から節間伸長期にかけては, 根系の老化が進行することが, 根組織のリグキン化程度の観察から明らかになった. それ故, 出穂以前の刈取りは, 根組織の老化の進行を抑制するので, 夏枯れ抵抗性を強化しうる手段であると推論した. II:(a)マメ科草種はアルファルファでの根系の発達は極めて比較し草種間差異は明瞭ではなかった. 特にアルファルファでの根系の発達は極めて良好で, 土壌のより深層まで発達し, 梅雨あけ後の高温寡雨期でも水分ストレス状態になることなく, 養水分の吸収も良好に経過した. (b)このことより, 梅雨あけ以後の潅水区と無潅水区とでその生育を比較すると本年はむしろ無潅水区の生育が良好であり, その生産力を維持しえた.
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