本研究はブナノキニ次林の保育方法確立を目的として、主として幼齢期における他樹種との競合経過、および林分構造について検討したものである。 研究の場所は、山形大学演習林内の数林分をはじめとして、秋田、山形、福島の各県に所在する十数か所のブナノキニ次林である。なおこれら林分のうち、山形大学演習林3林班の壮齢林内に、面積1.2haの固定研究林分を設定した。 研究の結果得られた知見は下記の通り。 (1)主伐の際に保残されたブナノキは、主伐後上長成長が急速に大となる。 (2)大低木の多くは幼齢時の上長成長がブナノキを上まわるが、間もなくゆるやかとなって、直線的生長経過のブナノキに追い越される。この間、群状に発生するリョウブ、マルバマンサクなどはブナノキの成長を妨げる。 (3)ハウチワカエデの成長はおおむねゆるやかで、保残木であってもその後発生したブナノキに追い越される。 (4)ブナノキニ次林は、更新直後一時大低木にブナノキが圧倒されるが、低木階を抜け出ると従高木階との競合段階に入り、その後はブナノキ同士、あるいは他の優高木との競合段階に入る。 (5)ブナノキの樹冠投影面積は胸高段面積と共に増大するが、原生林ではニ次林に比べてはるかに変動が大きい。 (6)ブナノキの前更作業における予備伐ないし下種伐は、樹冠の結実可能表面積を増大させる。 (7)ブナノキニ次林の収量ー密度図作成にあたっては、材積の代りに胸高断面積を用いれば充分である。直径の大きな立木から胸高断面積を積算して収量ー密度曲線が得られ、この曲線に対しては、林分が極端に一斉林に近くないかぎり逆数式が適合する。
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