研究概要 |
この研究は, 木造プレカット仕口の寸法最適化を実験的・構造解析的に行うことを目的としている. このため, 実大のT型仕口試験体について, 1.仕口接合部の静的加力試験, 2.仕口接合部の動的加力試験, 3.シミュレーションによる仕口寸法の最適化, をそれぞれ実施・検討することにした. 得られた結果を要約すると, 以下のとおりである. 1.仕口接合部の静的加力試験 仕口接合部に引張, 圧縮の鉛直加力または水平加力を負荷し, 接合強度と仕口寸法との関係を調べた. その結果, 引張比例限度荷重はほぞ断面の大小にかかわりなくほぼ一定であったが, 水平および圧縮加力の比例限度荷重は, ほぞ断面積の増加とともに, それぞれ放物線的に増大および一たん上昇後ゆるやかに下降する傾向を示した. これらのことから, 長ほぞのばあい, ほぞ断面の最適寸法は慣用寸法より幾分大きい51mm×51mm, 51mm×72mm付近にあることが判明した. 2.仕口接合部の動的加力試験 仕口接合部に周波数3HZ, 正弦波形の動的加力を加え, 荷重振幅と疲労寿命との関係を調べた. その結果, 荷重振幅と疲労寿命の対数との間には近似的に直線関係が認められること, 疲労寿命は込み栓断面寸法に依存し, この実験では25mm角のとき最大値を示すこと, 疲労限度は繰返し数10^2〜10^6の範囲では得られないこと, などが解明された. 3.シミュレーションによる仕口寸法の最適化 コンピュータシミュレーションにより仕口接合部の二次元および三次元応力解析を行った. その結果は静的加力試験の実験結果と定性的によく合致することが確かめられ, 仕口寸法の最適化にコンピュタシミュレーションの適用が可能なことが初めて明らかにされた. ここで開発されたシミュレーションの方法は, 各種の仕口, 継手の問題に適用できるので, 今後さらに研究を継続し, それらの問題解決に迫りたいと考えている.
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