研究概要 |
本年度得られた新知見を交付申請書に記した計画の順に以下に示す。 1.カタクチイワシシラスの諸感覚器の発達過程を走査電顕,光顕で組織学的に観察し、行動発現との関係を明らかにした。摂餌開始期に視覚器と平衡器が早くも完成し、シラス型仔魚の特徴であるついばみ型摂餌に両器官の発達完成が重要であることが分った。ふ化直後の仔魚の頭部に見られる遊離感丘上の長いクプラは、捕食者からの逃避に重要と考えられる。 2.マイワシシラスの黒潮水域と沿岸水域での同一日令個体の成長に有意の差があることを明らかにした。つまり黒潮による運搬のされ方により仔稚魚の栄養状態に差があり、このことは仔稚魚の生残に直接的関係をもつ。これは黒潮による卵稚仔輸送の今後の研究に大きな展望を与えるだろう。 3.マイワシ仔魚の浮遊期から成群期(シラス期)までの摂餌特性を餌料生物の組成変化と諸形態の機能形態学的変化との関連で明らかにした。今後天然での餌料生物の分布密度との関連において研究を進めたい。 4.餌料密度と生残率,生長との関連を知るために飼育条件下で (1)カタクチイワシ仔魚の日間摂餌量を直接観察法で測定した。 (2)カタクチイワシ仔魚の行動・形態に及ぼす飢餓の影響を明らかにした。今後種々の餌料密度下での実験をかさね天然海域での仔稚魚の生残,生長と餌料密度の関係を論じ得るまでに発展させたい。 5.水温,塩分,濁度餌料密度等の環境要因の勾配に対する仔稚魚の走性に関する研究では試験水槽を作製し、予備実験を行なったに過ぎない。この実験の難しさは、シラス期の仔魚をよい状態で飼育出来ない点にある。 尚これらの成果は、6題に分けて、昭和62年度春期水産学会へ発表する事が受諾されている。
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