研究概要 |
無脊椎(エゾアワビ)及び脊椎(カワマス)動物における発生初期機序の相異に留意しつつ, ゲノム操作に伴う倍数体の異型・同型接合度の変化並びに諸能力に対する影響等の解析を試み, 次の結果を得た. 1.3倍化に伴う成長・妊性の変化:発生後22月令では, エゾアワビ3倍体は2種類(第1または第2極体保持)共, 対照の正常2倍体との間に成長(体重・殻長など)の有意差は認められなかった. 正常2倍体が性成熟に達する次年度に向けて, 3倍化に伴う不妊化の有無・程度を併せて継続観察する. 2.異型・同型接合度の解析と遺伝子・動原体(G・C)間産換え率の推定:正常減数分裂, 第Iまたは第II減数分裂阻止および第1卵割抑制を行った場合, 卵原細胞が持つ祖先型雌性ゲノムが卵細胞・次世代に伝達される機序に基き, 遺伝子型組成の親子関係を定量的に解析する手法を開発し, 前記操作法により産生される兄弟群間に異型・同型接合度の顕著な差が生ずることを具体的に示し, 更にこの手法を応用して, エゾアワビおよびカワマスの複数のアイソザイム支配遺伝子座のGーC組換え率を推定した. 3.単一遺伝子座における異型接合型の超優勢:前述の遺伝子型組成の親子関係の解析法をエゾアワビのフオスフオグルコネート脱水素酵素支配遺伝子座に適用したところ, 3倍体両兄弟集団において異型接合型の生存度のヘテローシス現象が明かにされた. 4.雌親の遺伝子型による次世代3倍体集団産生に対する貢献度の差:前頃と同じ手法の応用により, 交配に用いられたエゾアワビ雌親のアイソザイム熱安定性変異遺伝子型が, 低温刺激によって誘導される次世代3倍体集団産生に際して異なる貢献度を示すことが3遺伝子座で明かにされ, 更に, 複数の遺伝子座の複合効果が示唆されるに至った. カワマスにおいても同様の現象が見出された. 上述の第2項並びに遺伝子座間連鎖分析の推進に基づく遺伝地図作成が次年度の重点目標.
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