研究概要 |
西日本における麻ひ性貝毒(PSP)研究の資とするため、最近養殖対象としてクローズアップされている二枚貝とヒオウギChlamys nobilisのPSPの成分組成等に検討を加えた。 すなわち、毒化したヒオウギ(大分県産)の中腸腺を3倍量の80%エタノール(pH2)で抽出後、ジクロルメタンで脱脂した。このものをDiaflo YM-2membrane(Amicon)により限外濾過し、次いでBio-Gel P-2(Bio-Rad Labs)およびBio-Rex70(【H^+】型:Bio-Rad Labs)を用いる各カラムクロマトグラフィーに順次付して毒を精製し、protogonyautoxin(PX),gonyautoxin(GTX)およびsaxitoxin(STX)の3画分を得た。 各画分について、PSP分析常用されている方法(電気泳動,TLC等)、ならびに新たに開発した高速液体クロマトグラフィー(HPLC法)によりその成分組成を調べた。このHPLC法においては充填剤に逆相シリカ系ODSS-5を、イオンペア剤にheptanesulfonic acidをを用いた。また、移動相には1%または20%メタノール-0.05Mリン酸塩緩衝液(pH7.0)を、蛍光発色剤には過ヨード酸塩を用い、励起波長は344nmとし、388nmにおいて測定した。 電気泳動ならびにHPLC分析の結果は、前記のPX画分が【GTX_8】および同エピマーから成ること、GTX画分が【GTX_5】,【GTX_6】の既知両成分のほか未知の2成分(A,B成分と仮称)から成ること、またSTX画分が未知の2成分(C,D成分と仮称)から成ることを示した。TLC分析の結果や、塩酸水解物の諸分析結果も上記の結果を支持するものであった。 未知4成分のうちCについては、種々検討の結果、ウモレオウギガニ等PSP毒化ガニによくみられるneoSTXのdecarbamoyl体と推定された。残余の3成分についても類似化合物の可能性が孝えられる。
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