研究概要 |
受精卵へ外来性の遺伝子を微量注入法を用いて導入するための基礎的研究を行なった. 用いた遺伝子は, メタロナチオネーンIをコードする遺伝子の5′上流域にヒト成長ホルモンの構造遺伝子を結合したもので, pBR322をベクターとしている. プラスミドDNAをBstEII EcoRlで消化し得らる2.5kbのDNAである. 遺伝子解析には, 成長ホルモンの構造遺伝子を含む1.1KbのPvuII断片を用いた. 動物は, 4週令のC57BL/6N雌マウスでPMSG-hCGで過非卵処理した後, 成熟雄マウスと交配し卵管膨大部より受精卵を得た. この受精卵に上記DNAを1〜2pl微量注入した. 炭酸ガス培養器で培養し, 二細胞期の胚を偽妊娠マウスに移植した. 遺伝子の検索は, 胎児又は出生産子をプロナーゼKで消化しフェノール抽出で得られたDNAについてドットブロット・サザンブロットで行なった. (1)EDTAの影響. 低濃度では72〜89%に卵割が観察され, 無処理群より少し低かった. 胚盤胞にまで発生する割合は, EDTA濃度の増加に伴なって低下し, 5nMでは3.7%と極端に低かった. (2)DNAの影響. DNA濃度の増加に伴なって卵割率は低下した. 着床率は, 100〜1000コピー/plで無操作の卵とほぼ同等であったが, 10000コピー/plの濃度では着床率・着床以後の生存率共に他の群に比較し極端に低かった(5%以下). (3)外来遺伝子組み込み体の出生. 雄性前核に1000コピー/plのDNA溶液を微量注入し, 卵割した109個の卵を仮親の卵管内に移植し, 内19匹の産子が得られた. この19匹中12匹は離乳にまで至ったが, 7匹は出生直後の種々の原因により死亡したため調べることが出来なかった. ドットブロット・サーザンブロットにより注入したDNAの体細胞へ組み込まれた量及びその大さを調べたところ, その内の1匹に150〜200コピー/細胞でほぼ同じ大きさのDNAが組み込まれていた.
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