研究概要 |
生殖腺を統御する繁殖機能系と,栄養素ならびにエネルギー動員を規制する栄養制御系とが視床下部において統合されていること,この統合に吸乳刺激が関与している可能性のあることに注目し,両系の相互関係及び,それに対する吸乳刺激の修飾について神経内分泌学的立場より明らかにすることを目的とする. 1.吸乳刺激を定量化することを目的として,乳腺神経の電気的刺激を吸乳刺激に替わる刺激として用い得るか否かを検討した. 乳腺神経の電気的刺激によりオキシトシンの分泌は促進され,血中平均黄体形成ホルモン(LH)濃度やLHパルスの頻度,振幅等が抑制された. これらの結果は,この刺激が吸乳刺激にかわるものとして用いられる可能性を示唆する. しかし,刺激の特異性に関して未だ検討の余地を残している. 2.実験に用いた雌ラットにおいて,LH分泌様式に拍動型とサージ型の二型があり,前者は視床下部内側基底部により,後者は視床下部前部によって統御されていることが知られている. 昨年度は泌乳前半期においては,吸乳刺激がLHの拍動的分泌を直接に抑制すること,この抑制は泌乳後半に解除されることを明らかにした(Maedaら1987). 本年度は,LHの拍動的分泌抑制も乳子を母親より離すと速やかに解除されることを示し,吸乳刺激による抑制が直接的であることを明らかにした. さらに,LHのサージ的分泌は,泌乳前半期・後半期を問はず,卵巣除去泌乳ラットにおいてエストロジェンの投与により開始することを見出した. これらの結果は,吸乳刺激はLHの拍動的分泌機序を抑制するが,サージ的分泌制御機序に対しては影響を与えないことを示す. この結果は,報文にまとめ現在投稿中である(Tukamuraら,投稿中).
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