研究概要 |
1.単離割球の発育性:牛の2〜8細胞期の初期胚は卵管に存在することから生体潅流すら得ることは困難とされるため,体外受精由来の卵子が実験に供された. 牛体外受精48時間後の2細胞期胚の割球分離によって得られた対に単離割球が家兎卵管へ移植された. 低率ではあるが胚盤胞が回収され,それらを受卵牛へ移植して産子への発育を観察中である. 1例ではあるが生体卵管潅流によって6個の8細胞期胚を回収し,2/8割球ずつ4つに分割した6セットの初期発育を家兎卵管培養で調べた. 回収した一部の胚盤胞期胚を移植された受卵牛は妊娠に至らなかった. 今後は体外受精由来の4〜8細胞期胚を使った1/4〜1/8単離割球を発育性を調べる予定である. 山羊胚の単離割球は4〜8細胞期胚由来の1/4〜2/8割球すら成る4個1セットの再構成胚の家兎卵管での発育率が調べられ,37%の胚盤胞が回収された. 発育率を向上させるために余分の割球を補足させて細胞数を増やすか,割球を融合させて細胞質量を増やす実験を進めている. 次の段階として,1卵性8子生産のため, 1/8割球由来の8個1セットの再構成卵の発育性を調べる予定である. 2.培養細胞との共培養系の確立:単離割球の発育能を調べるために,現在では細胞培養との共培養法が最も早道と考えられている. ラット肝細胞由来の継代培養細胞系は,マウス2細胞期胚および牛体外受精由来2〜4細胞期胚の発育を支持しなかった. 牛卵管上皮の継代培養系を確立し,同様の共培養を行なったが胚への発育効果は認められなかった. しかし桑実期胚から孵化胚盤期即ち着床前期胚の発育効果は著しかった. 卵丘細胞は静置培養によって黄体化し,本来の卵丘細胞の機能は果さなくなり,しかも継代培養は困難であった. この初代細胞は牛体外受精由来2細胞期胚を胚盤胞期まで発育させることが示された. この培養系の温度が気相条件などの改善とともに,得られた発生胚の産子への発育性を調べている.
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