研究概要 |
ボツリヌス毒素によるラット大脳シナプトゾーム(Syn)からのアセチルコリン(Ach)放出阻害機構、および毒素受容体と考えられているSyn膜ガンダリオシドと毒素との結合様式を解析した。 1.毒素とSynとの結合:結合は毒素の重鎖によって行われ、温度に依存しない可逆的反応であった。 2.毒素のSyn内への侵入:毒素によるAch放出阻害の発現には、37℃でlag timeが必要であった。このlag time前半に毒素はSyn表面から内部に侵入し、抗毒素抗体と反応できなくなった。 3.毒素のSyn内での毒性発現:毒素によるAch放出阻害の最大発現にはlag timeの後半が必要であり、これが毒性発現段階を反映した。 4.毒素とガングリオシドとの結合様式:低イオン強度、37℃では【^(125)I】標識B,【C_1】およびF型毒素はいづれも、3種のガングリオシド(GY1bGD1b,GD1a)と強く結合し、その結合恒数は2-4X【10^8】【M^(-1)】であった。しかし、0℃ではBおよびF型毒素はガングリオシドと結合しなかった。 一方、生理的条件に近い高イオン強度では、【C_1】型毒素だけが0℃および37℃でガングリオシドと強く結合し、BおよびF型毒素はいづれもガングリオシドと結合しなかった。しかし、ガングリオシドは【C_イ】型毒素を中和しなかった。以上の結果から、毒素とガングリオシドとの結合は、温度およびイオン強度に強く依存し、毒素の型によって異なることから、ガングリオシドだけがsyn膜上の本来の受容体と考えることには難があり、タンパク質性受容体の存在が示唆された。
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