研究概要 |
1.牛下痢症由来大腸菌線毛(K99線毛)(内貴担当) K99線毛抗原を有する大腸菌14株について,ウマ赤血球凝集反応阻止試験を行った結果,菌株の相違に関係なくK99線毛がNーグリコリルノイラミニルーラクトシルーセラミドと反応することがわかった. そこで一株から線毛タンパク質(19Kダルトン)を分離したところ,菌体より250倍強く反応することがわかった. この物質は正常人各組織で合成されないが, 人癌にHーD抗原として発現される癌抗原の1つとして知られているので,この線毛タンパク質を遺伝子組換えにより多量に合成する予定である. 2.牛腎孟腎炎由来コリネギクテリウム線毛(梁川担当) C.renaleとC.pilosumの線毛に対する単クローン抗体を各々作成した. 各々は菌体と牛外陰部上皮との接着を阻止するもしと阻止しないものに分類された. これらの菌株由来無線毛株を選択し,有線毛株と疎水性の強さについて比較したが,差は認められなかった. 従って線毛は特異的に宿主レセプターを認識して接着するものと思われる. 線毛の病原性への役割の1つとして宿主食細胞(マクロファージおよび白血球)の食菌作用への影響について検討した. C.renale有線毛菌は無線毛菌にくらべて両食細胞に対し抵抗性を示した. この抵抗性は線毛に対する単クローン抗体および補体を与えることによって消失した. 今後線毛タンパク質およびその認識するレセプター構造について解析する予定である.
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