研究概要 |
1.人医界では体細胞遺伝学的手法に依拠した染色体上の遺伝子地図に関する研究成果によって、癌をはじめ様々な疾患の遺伝子レベルでの研究が急速に進展している。家畜の分野でも遺伝的要因による疾患の解明、又は遺伝子移植などによる改良の目的で、遺伝子mappingなどに関する基礎的研究の進展が望まれている。そこで家畜の体細胞遺伝学研究の一環として、遺伝子の染色体上の局在を知る目的で、その基礎研究に着手した。 2.(1)遺伝子のmappingを行うために、雄豚の脾を入手して、これから豚の単層培養細胞(PKM-1)を得た。そしてこの培養細胞が正常な38XYの染色体核型を有していることを確認した。またハムスター由来のTK欠損株(B82)とマウス由来のHPRT欠損株(A9)を北海道大学理学部付属染色体研究施設より譲り受け、これを雑種細胞作成の親細胞として用いた。(2)雑種細胞のみを選択的に継代培養するために、濃度の異なるHATを含む選択培地およびO(ウアバイン)を含む選択培地下でPKM-1とB82,A9株を培養したところ、PKM-1はO存在下で死滅し、一方B82,A9はHAT存在下で死滅することを認めた。(3)PKM-1とA9をポリエチレングリコール(濃度50%)下で培養し、細胞融合させた。そののち、HATとOを含む選択培地で培養して、雑種細胞以外の細胞を死滅させた。(4)選択的に分離された雑種細胞を培養し安定したクローンを作出した。(5)現在各クローン毎に豚染色体が消失していることを認め、その消失の程度を分析している。 3.今回、科研費の補助金が61年11月に追加交付されたこともあって、得られたクローン中の豚染色体の消失の程度などについて充分明らかにできなかった。来年度はこの点について研究をすすめると共に、クローン化した雑種細胞毎に豚由来のどの染色体が残っているか、また雑種細胞の酵素の電気泳動的同定を行い、遺伝子mappingを行う。
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