研究概要 |
今年度は主として, 本菌のプラスミド(Pd)の分離を試み, Pdと病原性や薬剤耐性との関連, 疫学マーカーとしての利用の可能性等を検討した. 1.サル由来103株, ネズミ由来15株, ニワトリ由来6株, イヌ由来4株及びハト由来2株の計130株のカンピロバクターについてPdを検索した結果, うち75株58%から1.2〜360MdのPdが確認された. 2.Pdは何れの動物由来株でもその50%以上にみられ,その80%は5Md以下のものであった. 動物別に共通するPdは確認できなかった. 3.130株中45株35%が薬剤耐性菌で, うちTC耐性株が28株と多く, 次いでKM17,SM6及びPC2の順で, CP耐性株はなかった. 4.Pd保有と薬剤耐性との関連を解析したところ, 耐性株のPd保有率が87%に対し, 感受性株は43%で, 両者間に有意差がみられた. 5.耐性株のPdDNAの分子量を調べたところ, TC耐性株では41, 72及び360MdPdがそれぞれ54, 29及び13%の株にみられ, またKM耐性株では10Md以下の小さなPdが共通して多く検出された. 6.薬剤耐性の接合伝達試験ではTC耐性株の73%にのみ, トランスコンジュガントが得られ, その88%から72MdPdが分離され, TC耐性との関連が示唆された. 尚, この課題については実験を継続中である. 7.Pdとサルへの下痢原性あるいは培養細胞侵襲性等病原性との係わりを確認したが, 今回の実験の範囲では特に両者に関連を見出しえなかった. 8.十数頭規模で群飼育されていて, 下痢が頻発するサルについて, 本菌を分離しPdを調べたところ, 同一群由来株では比較的同一のPdプロフィールがみられ, Pdが疫学マーカーとして利用しうることが示唆された. 9.その他前年度同様, 各種動物の保菌状況及び抗体分布調査を実施した. 次年度は病原性の解析を行いたい.
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