研究概要 |
移行上皮は腎臓の腎杯に始まり, 腎盤, 尿管, 膀胱の管腔を縁取る上皮である. この上皮の腔側細胞膜は非対称性単位膜よりなることは, 従来すでに明らかにされている. 上皮細胞中には多数のフィラメンドが存在し, その径により, 直径が15nm以上のもの, 約10nmのいわゆる中間径のもの, 5nm以下のものと, 3種のフィラメントに分けられ, 直径5nmのフィラメントと直径15nmのものは収縮性タンパクよりなりCaーATPase活性の存在することを明らかにした(Sequchi,H.et al.Acta Histochem.Cytochem.15.76.1982). 今回, 主として抗ケラチン, 抗デスミン, 抗ビメンチンの各種の抗体を用いて, ペルオキシダーゼまたはFITCを標識とした間接法で, 免疫組織化学的に光顕レベルで検索した結果, 細胞質内にこれら3種とも存在することが観察された. フェリチンまたは金で標識した間接法を用い, 電顕レベルで検索した結果, これら3種の抗体で標識されるものは, 直径15nmおよび中間径のフィラメントであることが判明した. また抗アクチンおよび抗ミオシンを用いて, 上記と同様に光顕および電顕レベルで免疫組織化学的に検索した結果は, 共に主として細胞膜直下の直径5nmのフィラメントの多い細胞質に陽性で, ここに存在する直径5nmのフィラメントおよび直径15nm以上のフィラメントは共に収縮性タンパクであることが判明した. 現在急速凍結固定法を行った後, 凍結置換法および割断後のディープエッチングなどを行い, これらのフィラメントと非対称性の特異な細胞膜との関係を検索中であり, 最終的結論には致っていないが, Stachin et al.(J.Cell Biol.53.73.1972)の想定している様なαーアクチンないしはスペクトリン様のアンカリングタンパクが介在し, これらが主としてその直下に存在する上記の収縮性タンパクよりなるフィラメントを結合していることを確信してきている.
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