研究概要 |
グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)は体内外において合成される有毒否化合物の解毒において重要な役割を果たしていると考えられているが,癌胎児偏倚を示す酵素としても知られている. 今年度は, この酵素のアイソザイムのうち胎盤由来のものについて, 下記の如く研究を進めた. 1.酵素蛋白の精製 ヒト正常満期胎盤組織をホモジェナイズした後, 遠心, 瀘過,イオン交換クロマトグラフィー,グルタチオン結合担体を用いたアフィニティークロマトグラフィー等の操作により, 分十量約25Kdの二量体よりなる胎盤型GST(GSTーπ)を精製した. 2.モノクローナル抗体の作成 上記の如く精製した酵素蛋白をBalb/cマウスに免疫後,その脾細胞をマウス由来骨髓腫細胞株であるSP2と細胞融合せしめ,特異抗体を産生するハイブリドーマをクローニングした. 得られたモノクローナル抗体は, IgGl(K)であり,ELISA,ポリアクリルアミド電気泳動のウエスタンブロットにより特異性を確認した. また, この抗体は酵素活性を阻害し得るものであった. 3.ヒト組織における免疫組織化学的検討 新鮮凍結あるいは4%パラフォルムアルデハイド固定した組織の凍結切片において,モノクローナル抗体を第一抗体としたABC法を用いた. 特に電顕的観察は, preーembedding法によった. 本酵素は, ヒト胎盤においては基底盤のtrophoblast由来と考えられるいわゆるX細胞と機毛のSyncytioーtrophoblastの両細胞のamorphous cytoplasmと後者のmicrovilli基底部の細胞膜にその局在を認めた他,腎の遠位尿細管細胞,精巣のLeydig細胞,気管支の線毛土皮細胞にも局在を示した.
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