昭和61年度には次の研究を行った。1.胎生16日目及び生後1日目のラット小脳片を脳幹片咸いは脊髓片と組み合わせて21日間培養した後、小脳片内ニューロンに蛍光色素(procion yellow)を注入し、役50μ厚の切片をクリオスタットで作り、落射蛍光顕微鏡でその切片内の蛍光色素で標識されたニューロンの全体像を観察した。胎生16日目小脳片内の大形ならびに小形ニューロンはいづれも数本の樹状突起様の細胞質突起を出しているが、これら突起の形態より小脳皮質内ニューロンとの相似性を判定することは困難であった。しかし、生後1日目小脳片内の大形ニューロンでは、その胞体部より太い樹状突起が一本伸び出しおり、その突起は分枝して終わっている。また、この突起からは短い速突起が出ている。小形のニューロンからは細い樹状突起が数本伸びている。これら樹状突起の走分から、大形ニューロンはプルキンエ細胞に、小形ニューロンは顆粒細胞に類似した形態を培養下においてもとることがわかった。2.小脳片と組み合わせた脳幹片或いは脊髓片内ニューロンにHRPを注入し、HRPにより標識された軸索の小脳片における走行を観察した。軸索には大形ニューロンの樹状突起と棘突起に近づいて終わるもの、或いは小形ニューロンの間に入って終わるものがある。このような走行よりこれら軸索は登上線維、苔状線維等の小脳求心線維に類似していると判定した。3.生後1日目より28日目までのラット小脳虫部と半球にHRPを注入し小脳求心線維の起始ニューロンの生後発生を橋核と下オリーブ核について観察し、生後1日目には橋核由来の苔状線維と下オリーブ核由来の登状線維がすでに小脳に到達していることを明らかにした。現在、この結果をもとに橋核ならびに下オリーブ核にHRPを注入し、HRPにより標識された小脳求心線維の小脳皮質における走行の発達について検索中である。
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