研究概要 |
胃の壁細胞は高濃度の塩酸を分泌する. H,K-ATPaseは壁細胞の頂端膜中に存在するH^+能動輸送ポンプである. 壁細胞中に多数存在する細管小胞中には, H,K-ATPase以外に, S-S架橋で開くCl^-チャンネルが存在することを我々は以前に発見した. S-S架橋によってCl^-チャンネルが開いた状態の細管小胞の性質は, 頂端膜を小胞化したものの性質とよく似ていた. この事実は, Cl^-チャンネルが開いて, 細管小胞が頂端膜に融合する可能性を示した. (J.Biol.Chem.1986) 次に分泌状態にあるブタ胃より, 頂端膜小胞及び細管小胞の両方を同時に得た. 細管小胞を抗原として単クローン抗体を各種調製した. 単クローン抗体HK2032は細管小胞と頂端膜小胞中のH,K-ATPaseをともに阻害した. 即ち, 両小胞中のH,K-ATPaseは免疫的に同一のものであり, 細管小胞が, 頂端膜と酸分泌刺激によって融合することが明らかとなった. 更に, S-S【tautomer】2SH変換によって開【tautomer】閉しうるCl^-チャンネルがH,K-ATPaseの構造の一部であるとの直接的証拠を得た. 即ち, 単クローン抗体HK2032は, H,K-ATPaseを失活させると同時にCl^-チャンネルを閉じる性質がある. その際, この単クローン抗体H,K-ATPaseのサブユニットとのみ結合する. 従って, H,K-ATPaseは, Na,K-ATPaseやCa^<2+>-ATPaseとエネルギー伝達部位はよく似ているが, アニオンチャンネルを有するところが非常に変わっている. (J.Biol.Chem.1987). これらの抗体以外にも, 興味深い性質を有する抗体を得ている. ウサギ胃腺のパッチクランプ法を使い, 壁細胞の側基底膜中に存在するK^+チャンネルやCl^-チャンネルを分析した. 今後, 頂端膜についてもパッチクランプ法と単クローン抗体を組みあわせた研究を行う計画である.
|