種々の動物のヘモグロビン(Hb)の酸素結合機能を、異なる実験条件下で測定・解析し、互いに比較することによって、各Hbに固有の、また逆に、全Hbに共通の機能発現の機序を見い出し、究極的には、成人Hbにおける構造機能連関の解明に役立つ知見を得る目的で、以下の研究を行なった。 1.本研究費で購入した高速液体クロマトグラフシステム(ファルマシア製FPLCシステム)を用いて、動物の溶血液からHbを精製した。 2.イヌのHbの酸素平衡曲線を5.5〜9.1の範囲の種々のPH条件で測定して、Bohrプロットを作成し、ヒトHbのプロットと比較すると、両HbのBohr効果が、酸性領域で微妙な差を示すことが分かった。 3.ハコネサンショウウオ(Onychodactylus gaponics)のHbでは、ヒトHbに比べて、酸素親和性が低く、Bohr効果はほとんど無く、協同性はやや減少し、有機リン酸塩の効果は全くみられないという機能特性を示した。 4.アメリカ・オオサンショウウオ(Cryptobranchus alleganiensis alleganiensis)のHbでは、ヒトHbに比べて、酸素親和性が低く、Bohr効果は逆方向で、協同性は同程度、有機リン酸塩の効果はほとんどみられないという機能特性を示した。また、赤血球とHb溶液との間に、酸素親和性の差異がみられた。このサンショウウオの酸素親和性は、ハコネサンショウウオのそれに比べると、赤血球においてもHbにおいても、高い値を示した。 今後、さらに動物の種類を増やすこと、また、サンショウウオにおいては、赤血球とHbの酸素親和性の差を生じさせる因子が何であるかを見極める必要があろう。
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