研究課題/領域番号 |
61480102
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研究機関 | 国立循環器病センター |
研究代表者 |
菅 弘之 循病セ, その他, 研究員 (90014117)
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研究分担者 |
二木 志保 国立循環器病センター研究所, 循環動態機能部・冠循環研究室, 室員 (60190112)
能沢 孝 国立循環器病センター研究所, 循環動態機能部・冠循環研究室, 室員 (00180737)
安村 良男 国立循環器病センター研究所, 循環動態機能部・冠循環研究室, 室員 (30183669)
後藤 葉一 国立循環器病センター研究所, 循環動態機能部・冠循環研究室, 室員 (40142179)
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キーワード | 心臓 / 心筋 / 酸素消費量 / エナジェティクス / 効率 / 圧容積図 / 収縮機構 / ATP |
研究概要 |
本年はこれまで研究してきたイヌ左心室の酸素消費量と収縮期左容積面積とから求まる心筋の収縮機構のエネルギー効率を高める因子の有無に関する研究を行った。収縮期圧容積面積は収縮末期と拡張末期の圧容積関係曲線と収縮期圧容積軌跡とに囲まれる部分の面積であって、可変弾性モデルを用いた理論的研究から、この面積は心収縮にともなって発生する総機械的エネルギーを表わしていることが明らかになっている。酸素消費量はこの圧容積面積に無関係な成分(基礎代謝と興奮収縮連関用)と圧容積面積に比例する成分(収縮機構用)とに分けられる。酸素消費量と収縮期圧容積面積との関係直線の勾配が収縮機構のエネルギー変換効率を密接に反映すると考えられる。この勾配(縦軸:酸素消費量)の逆数が効率に比例する。カテコールアミン類やカルシウムイオンによって心室心筋の収縮性を高めてみても、この効率は約40%であってほとんど影響を受けなかった。これは、これらの薬物が急性には収縮機構のエネルギー変換要素であるミオシンのATPアーゼの酵素活性を変えないことから納得のゆく結果である。そこでこのATPアーゼ活性を低下させる方法として低温(27-30℃)の効果を調べた。ATPアーゼの【Q_(10)】は約2.5であるから37℃にくらべてATPアーゼ活性は0.4〜0.6倍に低下していると考えられるが、酸素消費量と収縮期圧容積面積関係の勾配にはほとんど影響が見られなかった。このことから、急性のATPアーゼ活性の変化は、この収縮機構のエネルギー変換効率にほとんど影響を与えないことが考えられる。他の研究者によりミオシンATPアーゼがアイソザイム間の変化によりその活性が変り、そのために収縮張力発生のためのエネルギー経済性が変化することが主張されているが、今回の研究結果はミオシンATPアーゼ活性と収縮機構のエネルギー効率間の関係の複雑さを示す。今後の研究が必要である。
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