研究分担者 |
田中 伸明 国立循環器病センター研究所, 循環動態機能部, 研究員 (50197456)
二木 志保 国立循環器病センター研究所, 循環動態機能部, 研究員 (60190112)
能沢 孝 国立循環器病センター研究所, 循環動態機能部, 研究員 (00180737)
安村 良男 国立循環器病センター研究所, 循環動態機能部, 研究員 (30183669)
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研究概要 |
心臓のポンプ機能の限定にある心筋の収縮機構の機械的エネルギー効率を高める因子について実験生理学的に研究するのが本研究の目的である. 特に, 心室の収縮に伴って発生する総機械的エネルギーを心室の収縮期圧容積面積でもって定量することは本研究の特長である. この面積をPVAと呼んでいる. これまでの一連の研究から心室の酸素消費量(VO_2)とPVAの関係の勾配が収縮機構のエネルギー効率を反映することが明らかになっているので, 本研究では, この勾配の変化に注目して実験を行った. エネルギー効率を変える可能性のある因子として, 1)低温, 2)虚血, 3)急速負荷解除の3つを検討した. まず心室を37°Cから29°Cに徐々に低下させると, 収縮力が増すにもかかわらず, VO_2-PVA関係はわずかしか上方へ移動せず, かつその勾配は不変であった. これはミオシンATPアーゼ冷性が低下して, 収縮効率が上るという一般の概念に反するもので, その機序を考察した. 2)虚血では, 問題の勾配がゆるやかになり, 一見効率が上昇したかに見えたが, これはPVA増加につれて収縮性がさらに低下したために, VO_2が低下した結果によるものであり, 効率の上昇でないと結論された. 急速負荷解除法によってはVO_2-PVA関係は明らかに低下した. この解釈は, 同じPVAを産生するにも, その後の維持の時間が少い方が, VO_2が少くてすむことを示しているものではないか. もしそうならば, 単に従来の方法で求めたPVAは総機械的エネルギーのみならず, エネルギー損失をも含んでいることになり, 収縮機構のエネルギー効率を過小評価してきたことになるかもしれない. この点は今後の研究に待たねばならない. そのようなわけで, 今回の研究は初期の目的を十分達したと同時に, さらに発展させるべき研究の方向が明らかになった点で意義が多かったと考えられる.
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