研究概要 |
ネンブタール麻酔ネコを用いて急性実験を行ない、下記の成果を得た。 1.後肢皮膚神経の支配領域の検索:saphenus,sural,peronealおよびplantarの各皮膚神経の切断末梢側から後肢皮膚の触,圧刺激により誘発される求心性インパルスを記録し、各皮膚神経の支配領域を調べて明らかにした。 2.後肢皮膚反射の空間パターンの解析:後肢皮膚各部の局所刺激および上記各皮膚神経の電気刺激に対する反射応答を、後肢諸筋の筋電図および運動ニューロン細胞内導出により記録し、皮膚反射の入出力空間パターンを調べて以下の結果を得た。(1)皮膚反射の空間パターンは、とくに趾の伸筋(骨間筋,短指屈筋,虫様筋)運動ニューロンにおいて顕著な部位特異性を示した(下記)。しかし前脛骨筋,短腓骨筋,第3腓骨筋等の運動ニューロンの皮膚反射も部位特異的なパターンを示し、部位特異性は程度の差はあれどの筋でも見られる皮膚反射の一般的性質であることが示唆された。(2)趾の伸筋運動ニューロンに対する部位特異的皮膚反射は、肉趾および爪の基部の皮膚刺激により顕著に誘発された。反射のパターンは、中心肉趾からはすべての指の伸筋に対して興奮,指の肉趾および爪基部からは同じ指の伸筋に対して抑制,それから離れた指に対して興奮,であった。 3.部位特異的皮膚反射のシナプス機構の解析:運動ニューロンに誘発される部位特異的皮膚反射のシナプス電位の中枢潜時を測定した結果、その最短の経路は大多数の例で3シナプス性であると判定された。 4.前肢における部位特異的皮膚反射の検索:足底皮膚とくに肉趾の刺激により趾伸筋運動ニューロンに後肢と類似の部位特異的反射が誘発されること、しかしそのパターンは若干後肢と異なるところがあることが明らかにされた。
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