麻酔ネコを用いて前肢皮膚反射の神経機構を調べ、下記の成果を得た。 1.皮質脊髄路の皮膚反射経路に対する作用の解折 a) 前肢の運動ニューロンから細胞内記録を行ない、皮膚神経刺激で誘発されたPSPが錐体刺激により促通され、従って皮質脊髄路は皮膚反射経路の介在ニューロンに収束し興奮作用を及ぼすことが明らかにされた。経過されたPSPの皮膚神経volleyから測った中枢潜時が1.0-3.0ミリ秒であったことから、皮質脊髄路は2シナプスおよび多シナプス皮膚反射経路の介在ニューロンに収束することが明らかにされた。 b) 皮膚入力を受けC_8側索に軸索を送るC_<6-8>の介在細胞から記録した。これらの細胞に皮質脊髄路は単及び多シナプス興奮作用を及ぼすことが明らかにされ、1-a) の運動ニューロンの知見を説明し得た。 2.赤核脊髄路の皮膚反射経路に対する作用の解析 a) 1-a) と同様の検索により、赤核脊髄路も皮膚反射経路に収束するが、皮質脊髄路と違って中核潜時1.6ミリ秒以下の反射経路には収束しないことが明らかにされた。 b) 介在ニューロンの記録の実験により、皮膚反射経路の介在ニューロンに赤核脊髄路の興奮入力が収束することが確かめられた。 3.皮膚反射経路の最終介在ニューロンの同定 a) 皮膚から入力を受けるC_<6-8>のV-V1層介在ニューロンがT_1の運動核へ投射することを、逆行性興奮の閾値のmappingにより明らかにした。 b) spike triggered averaging法により、皮質神経、皮質脊髄路、赤核脊髄路から入力を受ける介在ニューロンがT_1の運動ニューロンに単シナプス結合することを確かめて、皮膚反射経路の最終介在ニューロンを同定した。興奮ニューロンも抑制ニューロンも同定できた。それらは主にRexed V-V1層に存在した。
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