研究概要 |
筋紡錘感覚神経末端における機械受容変換膜のイオンチャネルを電気生理学的、生物物理学的、および超微形態学的にしらべて、その特性を明らかにすることを目的としている。そのために、構造が比較的に簡単なカエル骨格筋内の筋紡錘を単離し、その嚢を酵素で消化した標本を先ず完成させた。その標本は感覚神経末端の機能が正常のままで、外液に与えたイオンや薬物を直接神経末端に作用させることが可能である。 この標本を一定速度で伸張中に発生する紡錘電位を示標にして、種々の一価陽イオンの選択透過性を観察した。 その結果、アルギニンやグルコサミンなどの大きなイオンまで通過できるチャネルであることが明らかになった。 二価陽イオンのうちCa,Ba,Srは神経末端膜の電気抵抗を高めて、紡錘電位の振幅を大きくするが、Mn,La,Cdなどはチャネルを遮断する効果が強いために紡錘電位の振幅を低下させる。 Mg,Co,Niなどは電気抵抗の上昇により先ず紡錘電位の振幅を高めるが、それらのイオン濃度が高くなると遮断効果が強く現われて振幅は低下した。 要するに変位依存性チャネルは二価陽イオンにより強く修飾されることがわかった。 変位依存性チャネルを超微形態的に観察しようとする試みは、凍結割断法とディープ・エッチング法を使って研究をしてきた。 後者の方法で、感覚神経末端の置かれている環境構造が明らかにされ、網状のマイクロフィラメントが筋紡錘の形態依持に大きな役割を果していることがわかった。 凍結割断法で明らかになった膜内パーティクルの密度は、神経末端の先きほど低い。除神経後3日で、その密度が正常時の20%までに低減すると、筋紡錘からの求心性インパルスは消失した。 この形態と機能の並行する低下は、膜内パーティクルの一部が変位依存性チャネルである可能性を示唆するものであると考えた。
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