研究概要 |
筋紡錘感覚神経終末の機械受容チャネルを超微形態的に同定するために,凍結割断法を使って無髄神経膜内粒子(パーティクルの一部はイオンチャネルであることがわかっている)のレプリカ像を得て,その粒子密度や直径を計測した. その膜にはNa^+,K^+,Ca^<2+>などのイオンチャネルも混在することがわかっているから,これらと機械受容チャネルを区別できないかと考えて感覚神経を切断後の変化をしらべた. その結果,除神経後3〜4日で膜内粒子密度が正常値の20%以下に下がると,伸張に対する応答が消失することがわかった. 単離したカエル筋紡錘の嚢をコラゲナーゼで消化した後,イオンや薬物を直接に感覚神経終末に作用させることが可能になった. その標本ではディブチリール・サイクリツクAMPにより自発性放電頻度が顕著に高まる. フォルスコリンでも同様の効果があったから,機械受容にもcAMPの関与があることがはっきりした. 自発放電頻度が高まっている間は,伸張応答が悪くなっていた. その応答は細胞外Ca^<2+>濃度を高めると改善されるから,Ca^<2+>の流入か,細胞内濃度と密接に関係していると考えられた. 単離し,除出したカエル筋紡錘の感覚神経末端から記録される紡錘電位はCa^<2+>チャネル遮断剤の投与で完全に消失する. その後も伸張に対して求心性放電を出すから,眞の受容器電位といえない. 正常リンガー液中では50nAまでの逆向性通電で紡錘電位の振幅は大きく修飾されるが,求心性放電頻度は殆んど変化しない. これは紡錘電位の発生する場所より求心性放電の符号化場所の方が一層末端にあることを意味している. K^+チャネル遮断剤作用下では50nA以下の逆向性通電により放電頻度が大きく修飾される. これらの結果から,筋活動電位によって筋紡錘感覚神経が誤発射しないように保護する機構の一つと推定した.
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