研究概要 |
ウシガエル腰部交感神経節細胞に, 細胞内微小電極法を応用し, アセチルコリンにより発生する興奮性シナプス後電位を低Ca^<2+>高Mg^<2+>液中で記録し, その量子数を伝達物質放出量の指標として, アドレナリンによる伝達物質放出の長期促進機構(Adr.ーLTP)を制御するサイクリックGMP系の作用とアドレナリン受容体の脱感作機序に関する実験を行い, 以下の研究成果が得られた. 1.ダイブチリルサイクリックGMP(100μM)存在下で,Adr.ーLTPのみならず, ダイブチリルサイクリックAMPによるLTPの発生が抑制された. このことは, サイクリックGMPを介する細胞内伝達系がAdr.ーLTPの一連の発現機構の中でもシナプス前末端内のサイクリックAMPの上昇後の過程に関与することを示唆する. 生理的条件下で, このサイクリックGMP系を活性化するシナプス前膜の受容体はマスカリン受容体やアデノシン受容体ではないことが,マスカリン(10μM)やアデノシン(1mM)がAdr.ーLTPに作用しないことから明らかになった. 2.Adr.ーLTPは, アドレナリン(10μM)の投与時間を10分から60分間に延長しても大きくならず, 10分間投与で最大のAdr.ーLTPが発生した. ところが, ダイブチルサイクリックAMPによるLTPの大きさは,投与時間の延長(30分→60分間)により顕著に増大した. このことは, アドレナリンのβ受容体が脱感作することを示唆する. この脱感作はアドレナリンを除去後20分で消失する. 以上の結果は, Adr.ーLTPの発生機構が,二つの制御機構,すなわちサイクリックGMPを介する細胞伝達機序とアドレナリン受容体の脱感作による自己抑制により調節されることを示唆する.
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