1、63年度の研究では、61ー62年度で関発された3次元視覚刺激装置を用い、ネコの後上シルビュース回にある高次視覚野の3次元視覚刺激に対する反応性を調べた。 2、後上シルビュース回には19野、PMLS、21a野などの高次視覚野があることが知られているが、その局在、他の視覚領野との神経結合については多くの論争があり、また視覚刺激に対する反応性の差などについては全く明らかにされていなかった。 3、本研究では、17野にWGAーHRPを注入し、17野に投射する遠心性細胞を標識し、遠心性投射のパターンに基づいて、19野、PMLS、21a野の領域を決定した。 4、これらの領域の高次視覚野細胞の視覚刺激に対する反応性を3次元視覚刺激装置を用いて調べた結果、各々の領野が特有の視覚刺激に対する反応性(19野細胞は鋭い方位選択性とEndーstop性を、PMLS野細胞は方向選択性とEndーstop性を、20a野細胞は鋭い方位選択性を持つ)を持つことが示された。 5、さらに、3次元視覚刺激装置によりこせらの反応性を定量的に測定し、形態学的に決定された領野における細胞の局在との相関を統計学的(多変量解析)に調べたところ、両者の間に強い相関があることが明らかになった。 6、これらの所見は専ら形態学的所見に基づいて区分された高次視覚野の神経細胞がそれぞれ独自の反応性を持ち、特有の視覚情報処理を行っていることを示すものである。
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