研究概要 |
本研究の目的は、種々のホメオスタシス機能の生体全体としての中枢連関機序における視床下部ペプタイド類の意義,すなわち、物質的基礎を解明する事である。本年度は次の様な研究成果を挙げた。 1.循環,浸透圧,体温の調節に関与するペプタイド(アンギオテンシン【II】,バゾプレッシン)の視束前野(POA)ニューロン機構:両ペプタイドともに、多連微小電極法によりPOA温ニューロン活動の促進と冷ニューロン活動の抑制を惹起する事,POAへ微量注入すると、代謝量が減少し体温が下がる事,血圧/容積受容器からの入力をうけている温度ニューロンが多く、これらの多くがアンギオテンシン【II】に反応する事などが明らかになった。この結果はPOAはAV3Vをはじめとする循環及び浸透圧調節系からの化学信号を体温に関する情報とともに、統合し、これら3つの調節系の連関に関与するペプタイド(TRH,ボンベシン,ニューロテンシン)のPOAニューロン機構:TRHはPOA温ニューロン活動を抑制し、冷ニューロン活動を促進する事,TRHが代謝量増加と皮膚血管収縮を起し、体温上昇を招来する事,ボンベシン,ニューロテンシンは温・冷両ニューロンともに抑制され、これらペプタイドの変温作用を説明できる事などが明らかになった。 3.睡眠と体温に関与するペプタイド:(MDP,DSIP)のPOAニューロン機構:MDPは温ニューロンの促進と抑制,冷ニューロンの促進を起こし、MDP発熱を説明できる事,DSIPは温冷両ニューロンとも抑制されるものが多い事などが明らかになった。今後は睡眠時、POAは明らかに体温を下げようという機序を働かせているのに、MDPの様な睡眠ペプタイドが何故体温上昇を起す方向へ作用するのかという問題を解決したい。 来年度は1,2,3ともに神経回路構成の中で解析し、中枢連関における物質的意義を明らかにする予定である。
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