研究概要 |
神経伝達物質はシナプス小胞に貯蔵され、そこからエクソサイトーシスで放出される。その分子機構の解明のため、シナプス小胞に特有な蛋白質を同定し生理的役割をしらべるのが本研究の目的である。 1.モノクローナル抗体の作製。モルモット大脳皮質より、ショ糖密度勾配法等を組みあわせて、シナプス小胞を精製した。これを免疫原として常法によりモノクローナル抗体を作製し、免疫組織化学によりシナプスを染めるものを選んだ。2.イムノブロットによる抗原蛋白質の同定。シナプス小胞の蛋白質を電気泳動により分離し、抗体が結合する蛋白質のサイズを定めた。シナプスを染める38種の抗体のうち、20種は分子量38000の、1種は30000の、3種は36000の、2種は60000のシナプス小胞に固有な蛋白質に結合した。残りの12種に対する抗原は提出されなかった。これらの蛋白質をそれぞれSVP38,SVP30、SVP36、SVP65と名づけた。3.免疫電子顕微鏡。小脳組織について行い、シナプス小胞に抗体が結合することが確認された。シナプス小胞画分について行い、シナプス小胞には結合するが、混在する他の成分には結合しないことがわかった。4.SVPのシナプス小胞における存在様式。SVPはデタージェント処理により小胞から分離されるが、その他の各種操作では解離しないことから、シナプス膜の構成蛋白質であると結論された。このうちSVP65のみがカルシウム存在下でリン酸化された。今後の計画としては1.抗体をシナプス部位に注入し、シナプス伝達に及ぼす効果をしらべる。2.エクスプレッションベクターを用いたcDNAライブラリーより発現される融白蛋白質を抗体により検出し、SVPの遺伝子をクローニングする。3.SVP65のリン酸の役割を追求する予定である。
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