研究概要 |
標記の研究課題について今年度は,1.サブスタンスK(SK,ニューロキニンA)の中枢における役割について自律神経反射機構を観察して検討した. SKはサブスタンスP(SP)と共通の前駆体から生合成されることから,実験は常にSKとSPとを対比させて行なった. 2.次いでSKおよびSPなどタキキニン・ペプチドの受容体の性質を調べる目的で,末梢の平滑筋組織であるモルモット回腸縱走筋およびラット輸精管を用いて実験した. 1.SKおよびSPの脳内含量の変化と自律神経反射機構との関係について: ラットを生後2日目にカプサイシン(50mg/kg,S.C.)処置すると,4週齢,7週齢および10週齢の時点で脊髓後角,延髓の三又神経脊髓路核および弧束核でのSP含量は対照例の40〜60%程度減少した. しかしSK含量の減少率はSPのそれに比べると小さいものであった. このようなカプサイシン処置例について,圧受容器反射,化学受容器反射および体性ー自律神経反射への影響を血圧,心拍数および腎臓交感神経活動で調べ対照例と比較したが,いずれの反射にもカプサイシン処置の影響は認められなかった. 以上の成績から,カプサイシンによりタキキニン・ペプチドを含む求心性神経の一部が変性した後でもこれら求心性神経を介する自律神経反射機構は維持されていることを示唆した. しかしこの場合にどのような代償作用が働いているかは未解決の問題として残っている. 2.タキキニン・ペプチド受容体の性質: 中枢のタキキニン・ペプチド受容体の性質を検討するに先立ち,平滑筋組織を用い収縮反応,放射活性標識リガンドによる結合実験およびイノシトール・リン脂質代謝を測定した. その結果,タキキニン・ペプチド受容体が数種のサブタイプに分類されることが示唆された.
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