研究概要 |
心房性Na利尿ポリペプチド(ANP)は腎に直接作用してNa利尿を起すことが知られている。そこで腎内での作用部位を明らかにするため、【^(125)I】標識リガンドを用いて、オートラジオグラフィをin vitro及びin vivoでリガンドを適用した場合について、行った。オートラジオグラフィは腎スライス、組織標本及び電顕標本の各レベルで行った。in vitroで【^(125)I】-αγANPを適用した場合、腎スライスでは皮質部に糸球体の分布と一致して斑点状に特異結合がみられ、また乳頭部にも明らかな結合が認められた。腎動脈及び腎孟にも特異結合が認められたが、弓状動脈、葉間動脈、輸出及び輸入細動脈等には結合が認められなかった。組織標本によるオートラジオグラフィによって、糸球体毛細血管腎動脈及び腎孟平滑筋に特異結合が証明された。乳頭部集合管を単離し、オートラジオグラフィを行ったところ、わずかながら特異結合が認められた。in vivoで注入した【^(125)I】-αγANPの結合をみると、スライスでは主として皮質部の斑点状の結合が著明で、腎髄質外層では直血管の分布と一致した放射状又は束状の走行の結合がみられたが、乳頭部での結合はきわめてわずかであった。組織標本では毛球体毛細血管と動脈性直血管に主として分布することを認めた。電顕オートラジオグラフィにより、糸球体の上皮細胞足突起に特異結合を証明した。単離糸球体と乳頭部集合管分画について結合実験を行い、親和性Kdと受容体量Rを測定した。糸球体ではKd=3.2×【10^(-9)】M、R=320fmole/mg蛋白であったのに対し、集合管ではKd=2.1×【10^(-8)】M、R=420fmole/mg蛋白であった。紫外線照射によるフォトアフイニティ標識によりリガンドと結合した受容体を可溶化し、分子量を求めたところ、腎には65,000ダルトンの受容体が存在することを明らかにした。同様の方法で測定した大動脈及び副腎の受容体の分子量は140,000ダルトンであり、腎のそれと異っていた。
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