研究概要 |
われわれはオートラジオグラフィによってANPの受容体は腎内では主として糸球体と直血菅に分布することを明らかにしたが,集合管にも軽度ながらANPの特異的結合が認められた. そこで集合尿細管に対するANPの直接作用の有無を検討した. SpraqueーDawleyラットの腎スライスより髄質内層部集合管(IMCD)を単離し,Burgちの方法によって in vitro で潅流実験を行った. 管腔内電位(Vt),^<22>Naフラックス,^<36>Clフラックス等を測定し,ANPの直接作用を観察した. またバソプレシン(AVP)による水及び尿素透過性亢進作用に対するANPの修飾作用についても検討した. ^<22>Naフラックス係数(10^<-7>cm^2s^<-1>)は対照時1.63±0.34であったが10^<-6>MーαγANPを溶液に加えても1.49±0.30で有意差はなかった. D1D1Clフラックス係数も対照時1.83±0.31に比べ,αーγANPによって1.80±0.22と不変であった. 潅流液と溶液の組成が等しい場合,経尿細管電位は0と区別できず,αーγANPも全く影響を与えなかった. 一方,ANPにより集合管の受動的なNa透過性が亢進し,Naの逆流による分泌が増加する可能性が示唆されているのでNa isethionate100mMを溶液に加えて生ずるNa拡散電位に対するANPの作用も検討したが,全く変化がみられなかった. 1MCDの水透過性Lp(10^<-9>cm^2s^<-1>atm^<-1>)は10uU/ml AVPにより71.7±22.9から477.8±54.3と著明に増加したが,10^<-6>MのαーγANPによってもこの値は変化しなかった. 尿素透過性(10^<-7>cm^2S^<-1>)はAVPがない場合8.69±1.77であったがANPによっても9.02±1.81と不変であった. 尿素透過は100uU/ml AVPにより6.65±2.53から18.22±5.33と有意の上昇を示したが,αーγANPによって21.36±7.18と有意の変化は示さなかった. 以上の成績は他の研究者との問で多少の異論があるが, ANPの著明な利尿作用に,尿細管の水・イオン輸送に対するANPの直接作用又はホルモン作用の修飾は主要な役割をはたしていないものと考えられる.
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