研究概要 |
当初の研究計画, すなわち細胞分化に伴うポリ(ADP-リボース)代謝の変動の解析, ポリ(ADP-リボース)合成の新しい阻害剤の開発, ポリ(ADP-リボース)合成阻害による分化誘導の試み, マイクロインジェクションによる分化誘導の試み, および分化に伴う遺伝子発現の変化の解析, に従って研究を進め, 以下の成果を得た. 1.細胞分化に伴うポリ(ADP-リボース)合成能の変化の解析--骨髄性白血病の多数症例について, 骨髄球の分化(成熟)に伴うポリマー合成活性の消退を確認し, 早期診断への応用の可能性を提示した. 2.新しいポリ(ADP-リボース)シンテターゼ阻害剤の発見と解析--200種を越える化合物につして, 同酵素に対する阻害効果を調査した結果, 従来知られた阻害剤の類縁対でさらに強力な阻害剤数種を見出すとともに, 全く異なる構造グループに属する誘導体中にも多数の強力な阻害剤を発見した. また, これらの阻害剤の構造-活性相関を明らかにした. 3.ポリ(ADP-リボース)合成の阻害による癌細胞の分化誘導--上記新しい阻害剤の一つ(4-ヒドロキシキナゾリン)によって, テラトカルシノーマEC-A1細胞を効率よく分化誘導することに成功した. 4.マイクロインジェクションによる解析--抗ポリ(ADP-リボース)抗体をフレンド赤血球病細胞にマイクロインジェクトしたが, ヘモグロビン産生細胞へ分化誘導することはできなかった. 5.分化に伴う遺伝子発現の変化の解析--ラット精巣において, 精子形成過程の進行とともに, ポリ(ADP-リボース)シンテターゼが減少, 消失することを見出した. 6.その他--グルタミルリボースー5-リン酸蓄積症の解析, およびシンテターゼのcDNA解析を行なった.
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