研究概要 |
1. 遺伝性高脂血症ウサギ(WHHL-rabbit)を用いて、抗動脈硬化作用の報告されている酸性糖脂質の1種であるスルファチドを1回10mg,隔日,3カ月間投与して、実験群と対象群の血清脂質及びリポタン白質の変動を検討した。 結果として、WHHLウサギの高コレステロール及び高LDL値を有意に低下させることはできなかったが、トリグリセリド量を低下させた。 2. WHHLウサギの血清LDLの抗体を羊で産生させ、その抗体を用いて、LDLの血管壁への浸潤,沈着を病理組織学的に蛍光抗体法によって検討したが、実験群も対象群も脂肪沈着は認められるものの、線維性プラーク病巣は認められず、弾性繊維も比較的よく保たれていることが観察された。問題としてWHHLウサギの異常な高LDL血症にもかかわらず病巣が比較的転いのが注目され、この点、幼児に見られる遺伝性ホモ型の家族性高コレステロール症とは異なるのではないかと思われた。その原因の解明は極めて重要である。 何故なら高コレステロール及び高LDL血症が動脈硬化性病変を直接惹起するのではなく、なんらかの抑制因子がこのウサギでは作用しているように思われるからである。 3. 動脈硬化性病変の成因としての血漿浸潤説と血栓説から注目されるラミニン,スロンボスポンジン,von Willebrand因子がスルファチドと極めて特異的に結合することから、従来あまり報告のないスフィンゴ糖脂質をWHHL及び正常ウサギ血清リポタン白質について分析したところ、スルファチドがスフィンゴ糖脂質の主体をなし、しかもWHHLウサギでは正常ウサギに比して約40倍も増量していることが明らかになった。目下、このスルファチドの代謝,リポタン白質との挙動,生理的機能の役割について検討がなされている。
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