輸送上皮形質膜形成機構の解析

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 61480127
• 研究機関: 浜松医科大学
• 研究代表者: 藤田 道也 浜松医科大学, 医学部, 教授 (60014031)
• 研究分担者: 武居 能樹 岐阜大学, 教養部, 助教授 (50023651) ; 上里 忠良 浜松医科大学, 医学部, 助手 (40115465) ; 太田 英彦 浜松医科大学, 医学部, 助教授 (00014192)
• キーワード: 小腸吸収細胞膜 / 刷子縁膜 / 側底膜 / サイトカラシンB / フロリジン / グルコーストランスポーター / Na,KーATPase / モノクローン抗体

研究概要

1.刷子縁膜小胞へのNa存在下のグルコースの取り込みはサイトカラシンBによって阻害された。1/2最大阻害濃度=10μM。サイトカラシンBの刷子縁膜への結合は最大70Pmd^0/mgタンパク、解離定数8μM、同阻害剤の結合は2ーデオキシグルコースまたはフロリジンによって軽度に阻害された。放射性サイカラシンBで光標識した刷子縁膜をSDSーポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけMr=86K、42Kの二成分を見出した。86Kは2ーデオシグルコースまたはフロリジンの存在で標識すると減少し、42KはサイカラシンEの存在や0.5MNaClで洗うことによって減少した。
2.2種のモノクローン抗体と、精製したNaイオン輸送タンパクに対するポリクローン抗体を蛍光標識してマウスの小腸および腎臟の切片を検策し、外表部分のペプチドに対する抗体のみが反応の弱いことが分かった。しかし、低濃度のSDSで切片を処理することにより反応性は高まった。腎臟尿細管上皮細胞の染色像は、電子顕微鏡像に見る基底線條構造に一致した像を示した。Naイオン輸送タンパクの密度の高いもう一つの細胞である小腸吸収上皮細胞でもこれらの抗体はその側底膜に一致した局在を示した。
3.0.5%トリトンXー100と0.5%デオキシコール酸でウサギ腎皮質の刷子縁膜から可溶化されたトレハラーゼはフェニルセファロースによく吸着し、0.5%トリトンによって一つのピークとして溶出した。この溶出液を濃縮し、37℃でインキュベートしたところフェニルセファロースに吸着しないトレハラーゼが得られた。外から加えた種々の既知のプロテアーゼ阻害剤はこの可溶化過程を抑制しなかった。おそらく、刷子縁膜に内在する何らかのタンパク質分解活性がはたらいたものと思われる。

研究成果

• [文献書誌] 藤田道也: 膜. 12. 64-71 (1987)
• [文献書誌] 藤田道也: 生体の科学. 37. 365-366 (1986)
• [文献書誌] 藤田道也: 生体の科学. 38. 89-91 (1987)
• [文献書誌] UEZATO,T.: Biochimie. (1989)
• [文献書誌] Uezato,T.: Biochem.Int.12. 199-206 (1986)
• [文献書誌] Uezato,T.: J.Cell Science. 85. 177-185 (1986)
• [文献書誌] 太田英彦: 生体の科学. 38. 369-370 (1987)
• [文献書誌] 太田英彦: 生体の科学. 38. 416-417 (1987)
• [文献書誌] Sugiyama,Y.: HEPATOLOGY.
• [文献書誌] YOKOTA,K.: Biochim.Biophys.Acta. 881. 405-414 (1986)
• [文献書誌] TAKESUE,Y.: FEBS LETT. 201. 5-8 (1986)
• [文献書誌] YOKOTA,K.: J.Biochem.103. 132-136 (1988)
• [文献書誌] 星猛: "院新生理学大系第18巻消化と吸収の生理学" 医学書院, 1-404 (1988)