研究概要 |
1.小腸粘膜上皮細胞から刷子縁部形質膜(MVM)と側底部形質膜(BLM)を単離精製した。その生化学的・形態学的特性解析を行った。 2.MVM、BLMに対するポリクローン抗体およびMVMの70Kタンパク、腎臓のNa,KーATPase、MVMのトレハラーゼに対するモノクローン抗体を作製した。MVM、BLM、Na,KーATPase蛍光抗体を用して免疫組織化学的検索を行い、組織における局在を明らかにした。 3.BLMのグルコース輸送はサイトカラシンB(CYB)で阻害され、^3HーCYBによる光親和性標識でBLMの52Kタンパクが標識された。他方MVMのグルコース輸送もCYBで最大約60%阻害され(Ki〓10μM)、またCYBの光親和性結合で86Kタンパクが有意に標識された(Kd〓8μM,Bmax=70pmol/mgタンパク)。 4.小腸MVMの70Kタンパクに対する蛍光抗体は小腸の微絨毛(MV)だけでなく、尿細管のMV、肝微胆管のMVとも反応した。Na,KーATPaseの抗体は尿細管、小腸、肝細胞管のBLMと反応した。Na,KーATPaseのcDNA情報に基づいて合成したペプチドに対する抗体はペプチドの分子内部位に応じて反応性を異にした。 5.尿細管MVMのトレハラーゼはMVMとホスファチジルイノシトールを介して共有結合していることが分かった。トリトンXー100を用いて精製した本酵素は疎水性を示し、フェニルセファロースカラムに吸着する。しかし、この溶出液を37℃でインキュベートすると親水形に転化した。プロテアーゼに対する種々の阻害剤を用いてもこの転化は抑制しえなかった。 6.放射性アミノ酸投与によるMVM、BLMのタンパクの生構築は、MVMに対し単相性、BLMに対し二相性を示し、後者が細胞内小胞体膜の混入によるものかどうか検討中である。
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