研究概要 |
ヒトDNAの試験管内複製系を構築するにあたり、初年度は複製にたずさわる酵素系の検討に努力を集中し次の様な結果を得た。 1)ヒトHeLa細胞を5mMEGTA,1mMEDTA存在下で抽出し、P-セルロースカラムにて分画するとDNAポリメラーゼαとプライマーゼが分離して溶出された。この様にして得られたHeLaプライマーゼは活性発現にカルシウムイオンが必須であった。一方、通常の方法にて精製するとプライマーゼはDNAポリメラーゼと複合体を形成しているが、この結合型プライマーゼもカルシウムイオンにより促進される。これらの結果から、カルシウムイオンはプライマーゼ活性促進、複合体の形成など複製開始の調節に重要な役割を果している事が示唆された。 2)DNAポリメラーゼαに対するモノクローナル抗体を2種類作製し、抗体カラム法によりDNAポリメラーゼαを仔牛胸腺より高度に精製した。この標品は150K,52K,45Kの3種のポリペプチドを含み、ゲルろ過法により活性型の分子量24万、グリセロール密度勾配遠心により沈降定数9.8Sを得た。またネガティブステイニング法による電顕観察では、分子量2-3X【10^5】に相当する球状分子である事を確認した。これらの結果よりDNAポリメラーゼαの基本型は150Kサブユニット1本と40-50Kサブユニット2本よりなると結論される。なおこのα酵素はプライマーゼ活性を有する事から小サブユニットがプライマーゼ活性を担うと考えられ現在確認を急いでいる。 その他、核マトリクスとDNAポリメラーゼαの結合にリン脂質が関与する事も見出している。次年度は以上の結果を基礎として複製開始点を含むDNAの側の検討に入る予定である。
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