研究概要 |
〔目的〕 生体全体系を用い、中枢神経系機能に密接に関与し多くの病態の存在する芳香族アミノ酸・芳香族アミン代謝の問題に新しい視野を拓くため、ラット血中芳香族アミノ酸(トリプトファン(Trp),フェニルアラニン(Phe)/チロシン(Tyr)をそれぞれに特異的な酵素の生体導入により選択的に除去し、臓器特に脳の代謝応答・生理応答そしてそれ等の過渡特性を調べ、生体内での芳香族アミノ酸の意義,脳内セロトニン(5-HT),カテコールアミン(CA)の意義そして、究極的には関連するホメオスタシスの安定性,可塑性,カタストロフの問題について知見を得る。 〔結果の討論〕 血中Trp除去のためトリプトファン側鎖酸化酵素I型(TSOI),Phe/Tyr除去のためフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)をそれぞれPseudomonas,R.glutinisよりの新精製法を開発し、グラム単位で純品を得た。ラット腹腔中にTSOI又はPALを投与すると、孰れも血中に高性卑で転入,活性を示し、至適量投与では数時間以内に血中Trpを数百分の1,Phe/Tyrを数%以下に、それぞれ撰択的に除去した。脳内Trpは相応して1/10,脳内Phe/Tyrは1/3-1/2に減少し、Trpより生合成される5-HTは、著しく早い代謝回転を反映し、やはり1/10に除去されたが、CA系は孰れの場合も無変化であった。ホメオスタシスの此様な「負」の擾乱に血液と脳が対応して変化ししかも独立成分が撰択的に変化する事実は大変重要な知見である。脳脊髄液のアミノ酸パターンを調べると脳内変化に迅速に追従している事が明らかであった。一方、5-HTの脳よりの撰択的除去は、中枢神経統制機構の中心,睡眠/覚醒リズムを擾乱し、意識交替の原点を示唆するパターンが得られた。
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