研究課題/領域番号 |
61480130
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田川 邦夫 阪大, 医学部, 教授 (40028296)
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研究分担者 |
黒澤 和平 大阪大学, 医学部, 助手 (70178127)
上池 渉 大阪大学, 医学部, 助手 (40152847)
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キーワード | 虚血肝 / カルシウム / ホスホリパーゼ【A_2】 / プロトン透過性 |
研究概要 |
虚血肝の障害・壊死の生化学的過程は、1.無酸素下での細胞内ATPレベルの低下によって惹起される細胞障害と、2.血流再開時に生ずる活性酸素が細胞構成物質を過酸化することによって起こる障害の二つに大別される。 61年度は、上記1の細胞障害のうち、まずミトコンドリア酸化的燐酸化系での障害過程の解明に焦点をあて、次のような結果を得た。1.正常状態のミトコンドリアでは蓄積されたカルシウムはCa-AT【P^(2-)】の形で複合体を形成し、それによって遊離【Ca^(2+)】の活量は低く押さえられている。2.このため低酸素下でミトコンドリア内のATPレベルが低下するとCa-AT【P^(2-)】が解離し、遊離【Ca^(2+)】が放出される。同時にホスホリパーゼ【A_2】の活性化が起こりミトコンドリア膜より脂胞酸が遊離する。3.ミトコンドリアからの脂肪酸の遊離と併行して内膜のプロトン透過性が亢進した。4.遊離【Ca^(2+)】の放出が生じても、それをキレートするか、または阻害剤でホスホリパーゼの活性を抑制しておくと、プロトン透過性の亢進はおこらなかった。以上の結果から、虚血状態によって生じるミトコンドリアの障害は、ミトコンドリア内のATP低下→Ca-AT【P^(2-)】の解離→遊離【Ca^(2+)】の放出→ホスホリパーゼ【A_2】の活性化→内膜のプロトン透過性の亢進という一連の生化学過程で生じることが明らかになった。 以上が本年度に得られた主な成果であるが、62年度はこれらを更に進めて、虚血下で生じる細胞骨格系の障害過程の解明と、虚血肝の血流再開時の過酸化障害及び活性酸素の除去系について検討することを目標としている。
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